内定辞退も…母国に足止めされる留学生 業界はつなぎとめに苦慮
熊本市の監理団体「くまかい協同組合」はオンライン面談を続け、待機が続く外国人の不安解消に努めている=2月中旬
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国制限の長期化などを受け、来日予定だった技能実習生や特定技能の外国人のキャンセルが相次いでいる。政府は緊急事態宣言期間中は受け入れを停止するとしているが、感染力が強いとされる変異株の流行が懸念されており、水際対策の緩和は見通せない。人手不足に悩む介護業界ではオンラインでの面談を続け、つなぎとめに苦慮している。 【グラフ】九州の感染者数の推移 「即戦力として期待していただけにショックでした」。福岡や熊本などで病院や介護施設を展開する桜十字グループの小林慎哉海外人材事業部長は話す。 昨年末、日本での感染者の急増を受け、インドネシア人ら5人が内定辞退を申し出た。急いで新たに5人に内定を出したものの、今年1月には新規入国が停止となった。受け入れ予定だった実習生ら31人は現地待機の状態が続いている。
一方、日本国内における2週間程度の待機費用などの負担が重く、企業側が採用を取りやめるケースも少なくない。中には、製造業で約60人のキャンセルもあるという。 昨春の感染第1波を受け、技能実習生らの入国制限は、ビジネス関係者の受け入れが例外的に始まった昨秋まで続いた。ベトナムの送り出し機関によると、航空便の激減で渡航費が高騰し、待機者は一時約3万人に上ったという。受け入れ再開に便乗するかのように、偽の求人票が出回り、ブローカーが多額の手数料をだまし取る事件も起きたという。 とはいえ、コロナ禍でも建設や農業、漁業などでは人手不足は深刻だ。日本人の離職率が高い介護業界にとって、外国人労働者への期待は強い。団塊世代が後期高齢者となる2025年には約38万人の介護人材が不足するとの試算もある。
介護の実習生を受け入れる監理団体「くまかい協同組合」(熊本市)は隔週でオンライン面談を行い、受け入れ予定の実習生らのケアを行っている。日本語教師の稲実茉由さん(29)は「少しでも不安を取り除き、モチベーションを維持してもらいたい」と話す。 実習生として来日予定のフィリピン人女性はオンラインで取材に応じ、「早く日本に行ってできるだけ長く働きたい。(面談で支えてくれるので)今は不安はないです」と語った。 首都圏に発出中の緊急事態宣言が21日に解除されても、外国人の受け入れが再開されるかは不透明だ。全国老人保健施設協会(東京)の光山誠・人材対策部会長は「入国制限が長期化し、外国人労働者の入国が遅れれば、事業所の一部閉鎖を考えないといけない法人も出かねない」と懸念する。 (久知邦)