コロナによる入国制限で打撃 人材不足の介護業界 技能実習生の受け入れストップ
入所者の女性に話しかける技能実習生のファム・ティ・タイン・ナムさん=大阪市東淀川区菅原1の介護老人保健施設「エスペラル東淀川」で2021年1月28日午後4時11分、近藤諭撮影
新型コロナウイルスの感染拡大による入国制限で外国人技能実習生が来日できず、介護施設の採用計画に影響が出ている。人材不足が常態化する介護分野では、技能実習生など外国人人材に期待を寄せているだけに打撃は大きい。人材不足とコロナ禍に苦しむ介護の現場を取材した。【近藤諭】 「体調はどうですか」。医療法人医誠会(大阪市北区)が運営する介護老人保健施設「エスペラル東淀川」(東淀川区)で技能実習生として働くベトナム人のファム・ティ・タイン・ナムさん(23)が入所者の女性に優しく語りかけると、女性が笑顔でうなずいた。 ナムさんはベトナムで看護師の資格を取得後、2019年8月に来日。日本語などの研修を受け、9月から同施設で働いている。網島亜矢子・介護主任は「意欲的な姿勢は他の職員にも良い刺激を与えてくれている」と評価。ナムさんは、「介護福祉士の資格を取って、日本で働き続けたい」と話す。 しかし、新型コロナの影響で、新たな実習生の受け入れはストップしている。技能実習生の受け入れを担当している小林太輔・老健群統括課長は「実習生は貴重な人材。受け入れ準備をしていたが、コロナの影響では仕方ない」と説明する。 外国人人材への期待が大きいのは、介護業界の慢性的な人材不足が理由だ。厚生労働省の試算では、25年には約38万人の介護人材が不足するとされている。府内も同様で、府が18年に策定した高齢者計画では、20年には介護需要に対して供給が1万1129人不足し、25年には不足が3万4495人に広がると推計している。 「外国人技能実習制度」の対象に「介護」が追加された17年11月以降、多くの実習生が来日し、介護現場を支えている。実習制度の監督機関「外国人技能実習機構」(東京都港区)によると、18年度に介護分野の技能実習生として入国したのは1823人だったが、19年度には約5倍の8967人に増加した。20年度はさらに多くの実習生が活躍する予定だったが、入国制限の影響で来日できていない実習生も多いという。 介護施設の施設長ら約1万1000人が加入する全国老人福祉施設協議会(同千代田区)の担当者は、「実習生用にアパートなどを用意していた施設もあり、経営面でも影響が広がっている。1日も早く収束してほしい」と話している。