差別や偏見払拭へ…理解もっと
TVAで日本人と交流するベトナム人実習生=先月12日、山形市
県内にベトナム人が増えている中、昨年9月に「在山形ベトナム人協会(TVA YAMAGATA)」が発足した。ベトナム人技能実習生は全国で重要な労働力となる一方、新型コロナウイルスの影響による失業者の犯罪などが目立ち始め、県内でも男らによる連続窃盗事件が起きている。TVAは草の根交流を進め、県民とベトナム人の相互理解を深めようと活動している。 TVAは山形市内で勉強会を開いたり、インターネットでの情報交換を活発に行ったりしている。TVAが先月開いた勉強会には実習生の男女3人と女子留学生が集まり、日本人ボランティアの10~50代男女8人と食べ物や文化の違いについて話した。 村山市で働く来日4年目のブイ・ザイン・クォンさん(25)は「言葉が話せるようになって、日本人が冷たいとの印象は変わった」と話す。母国は知らない人にも気軽に話し掛ける風土で、当初は寂しさが募ったというが、同僚に積極的に声を掛けて自習。日本人は「冷たい」のではなく「シャイ」だと分かった。天童市のダオ・ティ・ハーイ・ハンさん(29)も、無料の教室を探して勉強に励み、今は流ちょうな日本語を話せるようになり、野菜や料理をもらうなど地域のお母さんと仲良くなった。
しかし、2人のような実習生はまれだとTVAの笹原智子代表(41)は話す。来日前後に計4~6カ月間の研修を受け最低限のあいさつや日本の生活様式を学ぶが、日本人と会話するレベルには遠い。実習中の3年間、ベトナム人の仲間だけと付き合って帰国してしまう人も多いという。そこで「まず言葉の壁をなくす場が必要だ」と、日越をつなぐ活動を始めた。これまで日本人ボランティアと実習生計30人ほどが参加し、親交を深めている。 笹原代表は実習生の事件が報道されるたび、差別や偏見が広がるのではないかと心配になるという。県内のドラッグストアやスーパーで万引を重ねて県警に逮捕された男らは先月、窃盗罪で起訴された。動機について「新型コロナで仕事がなくなり、茨城県から換金目的で訪れた」と話しているとされる。 罪を犯すのは、ほんの一握りだ。村山市のクォンさんは「(ベトナム人のイメージを悪化させて)許せない」と語気を強める。「おまえの友達?」と冗談で言われた時は悲しかったと明かし、これから日本に来る同胞を案じた。
コロナ禍で往来が制限される中、実習生の仕事が減ったり、解雇されたりする事態が全国で起きている。笹原代表は孤立させないことが重要だとし、「積極的に地域の方々と交流する機会をつくっていきたい」と今後を見据えた。