外国人労働者頼みの農業現場 産地存続へ危機感 偏見の高まりも危惧
トマトのビニールハウス内で作業する外国人労働者=南島原市
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、人手不足で外国人労働者に頼ってきた県内の農業現場からは産地の存続を危ぶむ声が上がっている。入国制限は段階的に緩和されているが、技能実習生らの来日は今後の感染状況にも左右され、先行きは不透明だ。コロナのあおりを受け、日本で暮らす外国人への偏見の高まりも危惧されている。 県内有数の農業地帯、南島原市。この地域の複数の農家が口をそろえた。「外国人がいないといずれ産地は成り立たなくなる」 ■不可欠な存在 長崎労働局によると、島原、南島原両市の農業分野には300人(昨年10月末現在)の外国人労働者が従事。5年前と比べ倍以上になった。農家の高齢化が進む地域において、その存在感は増すばかりだ。技能実習制度の理念は途上国への技術移転。だが、現実には労働力として現場に不可欠になっている実態がある。 南島原市の農家で働くベトナム人の女性は、3年の実習期間を終えて今夏に帰国する予定だった。しかし、新型コロナで渡航が禁止。救済措置として一時的に「特定活動」の資格に切り替え働き続けている。周辺の農家でも同じように特定活動の外国人が働いているという。 「求人を出しても日本人は来ない。特にここ(南島原)みたいに端っこの地域には」。トマトのビニールハウスの中で作業する異国の若者を見つめ、受け入れ農家の男性(47)はつぶやく。「彼女たちもいつまでここにいてくれるか」 何とか今を乗り切れても、特定活動の外国人が母国に戻った後、新たな実習生らが予定通り来日できなければ「死活問題」。農家たちは不安を募らせる。 ■「心の壁」高く 農業や建設業などに外国人を派遣する諫早市の監理団体「ふれあい事業協同組合」代表理事の野副智徳さん(34)は、コロナ禍で外国人に対する「心の壁」が高くなったと指摘する。 11月中旬、ミャンマーから6人が専門的な知識や技術を持つ「高度人材」の在留資格で来日した。全員が出国前に母国で検査を受け陰性を確認。到着後は2週間の隔離が必要なため、ビジネスホテルに受け入れを相談したところ、宿泊を拒まれた。結局、監理団体の寮の一つを隔離施設として代用した。 海外は日本よりも感染が広がっており、以前から日本で暮らす実習生らも「外国人」という理由だけで偏見の目にさらされているという。「彼らは感染源でも何でもない。日本人と同じようにマスクもして真面目に生活しているのに」 農業や建設など人手不足の現場では、今後も外国人に頼らざるを得ないとの見方が強い。言葉の壁は努力で乗り越えられるが、心の壁は周囲の理解がなければ取り除くことは不可能だとする野副さん。「国や自治体は日本人の感染者に対してだけでなく、日本で暮らす外国人への差別もなくすようもっと発信してほしい」と話す。