技能実習生が心の支え コロナで苦境、白山の旅館経営者
ビデオ通話でベトナム人女性と交流する酒井さん(左)=白山市八幡町
旅館兼飲食店「白山お宿そば処さかい」(白山市八幡町)の酒井進代表(62)が、技能実習生として来日したベトナム人女性約20人と、帰国後も交流を続けている。旅館での約1カ月間の滞在で親交が芽生え、日本の「ボー(お父さん)」と呼ばれる仲に。新型コロナウイルスの影響で旅館は開店休業状態の苦境が続くが、酒井さんは「娘」からの励ましをエネルギーに、笑顔で前を見据えている。
ベトナム人女性はいずれも20歳前後で、昨年7月末、能美市内の製造業の会社と半年間の契約を結び、技能実習生として約40人が来日した。企業側が予定していた宿泊施設が急きょ使えなくなったため、酒井さんの旅館に依頼が来たという。
店で外国人を泊めるのは初めての体験。女性側も日本語を話せる人が少なく、酒井さんとおかみの光子さん(62)は身ぶり手ぶりで意思疎通を図り、次第に打ち解けるようになった。酒井さんは「みんな明るくて、人懐っこい。仲良くなるのに時間は掛からなかった」と振り返る。
当初「ダオイ(おじさん)」と呼ばれていた酒井さんは、半月ほどたつと「ボー」と呼ばれるようになった。女性たちは新しい住まいが決まり、8月末で旅館を去ったが、酒井さんは誕生日会を開いてもらうなど、その後も親交は続いた。
2月にベトナムに帰国して以降も約20人とは会員制交流サイト(SNS)によるビデオ通話やメールなどで連絡を取り合い、日々の出来事などを紹介しあう。
15日、ビデオ通話で酒井さんと会話したヴイ・ヴァン・アインさん(21)は「ボーは困ったときにいつも手伝ってくれる。もう一度日本に戻って会いたい」と話した。
新型コロナの影響で、飲食店は2月から営業を自粛し、旅館も客がほぼいない。それでも、片言の日本語で「コロナは大丈夫?」と心配されると気遣いにうれしくなるという。酒井さんは「コロナが落ち着いたら、また技能実習生を受け入れたい。白山や鶴来の良さをもっと伝えたい」と意気込んだ。
北國新聞社