【ロンドン時事】航空会社を国有化する動きが世界的に拡大している。
新型コロナウイルス危機で旅行需要が冷え込む中、経営危機に陥った「空の交通インフラ」を救済するためだ。ただ、代表的な航空会社だけを救うことには「不公平だ」との批判もある。
「政府の関心は救済だけでなく、国を代表する航空会社の再建にある」。イタリアのパトゥアネッリ産業相は4月下旬、アリタリア航空の完全国有化を正式表明した。同社は長年の経営不振で2017年から政府の管理下にあったが、株式売却計画を撤回し、6月から新体制で経営再建を目指す。
ポルトガルのコスタ首相もTAPポルトガル航空について「国有化の可能性を排除しない。不可欠な企業を失うリスクは取らない」と明言。フランスもエールフランスなどを「必要なら国有化する」(ルメール経済・財務相)としており、既に70億ユーロ(約8100億円)の政府支援を決めた。
米国は航空会社を補助金や低利融資で支援。アジアでも公的支援の動きが出ており、08年のリーマン・ショック後に一部の金融機関が国有化されたのになぞらえる向きもある。
これに対し、アイルランド格安航空大手ライアンエアのオレアリー最高経営責任者(CEO)は欧州メディアで「各国政府は全ての航空会社を平等に扱わず、エールフランスやルフトハンザ(ドイツ)のような政府支援の中毒患者にだけ巨額の補助金を与えている」と批判。格安航空も含めた公平な支援を訴えた。
国際民間航空機関(ICAO)によると、今年の旅客数は前年比80%減少し、業界全体の収入は2700億ドル(約29兆円)減る恐れがあるという。
最終更新:5/7(木) 7:40
時事通信