▽7割が実習生 3倍の賃金、家族支える
中国地方に暮らすベトナム人が急増している。2019年6月時点で2万6939人。現在の統計制度になった12年末の約10倍に激増し、うち7割の1万8794人が技能実習生だ。若者たちはなぜ日本を目指し、帰国後はどんな道を歩んでいるのか。現地を訪れ、送り出し機関や元実習生たちを取材した。
ベトナム南部の商都ホーチミンにある送り出し機関「THUAN AN KYOTO(トゥアン アン キョウト) 国際人材」。19年末、教室を訪れると、10~20代の男女約40人が日本語を学んでいた。
全員が白いポロシャツに黒いズボン姿。記者が入ると、一斉に起立し、日本語で「よろしくお願いします」。礼儀正しさに驚いた。日本を目指す理由を尋ねると、「日本の人は真面目。働き方を教わりたい」「アニメが好き。憧れの国」などと口々に語った。
ベトナムの短大を卒業後、コンビニでアルバイトをしていたというダウ・トゥイ・アイン・ニュンさん(25)は「お金が欲しいです。両親を支えたい」と拙い日本語で打ち明けた。
▽出稼ぎ意識強く
出稼ぎ先として日本の人気は高く、送り出し機関はホーチミンや北部の首都ハノイにある。実習生は4~6カ月間、寮生活で日本語やマナーなどを学ぶ。多くは地方出身者。地方は都市より賃金水準が低く、両親の生活費や兄弟の学費援助のために日本に渡る若者が多い。技能習得が名目の実習制度だが、「出稼ぎ」の意識が強いのが実態だ。
記者の案内役を務めた日本語講師のチャン・ティー・トゥ・フォンさん(28)も地方都市ダラットの出身。14年に来日し、福山市の縫製会社で3年間実習した。「実習中にもらえる賃金はベトナムの3倍くらい。日本に行ったのは両親の暮らしを支えるため」。6人きょうだいの長女で、他の3人も日本で実習中という。
一方で、ベトナムでは悪質な送り出し機関も目立つ。渡航費などを含め、送り出し機関に払う手数料は40万円台から100万円以上と開きがある。「ぼったくり」の被害も後を絶たない。
ハノイの送り出し機関では、元実習生のグエン・チョン・ハウさん(29)が働いていた。日本企業や監理団体との調整役を担う。
▽実家担保に借金
ハウさんは14年に日本へ渡り、17年まで福山市の建築会社で実習した。その間、地域の日本語教室で学んだことが帰国後の就職に役立った。昨年結婚し、念願の一軒家も購入した。
ただ、来日前には実家を担保に借金し、送り出し機関に100万円を払った。来日後は、家賃や光熱費を除く月給約7万円のうち約5万円が借金返済や仕送りに消えた。「せっかく日本に行けたが、自分のお金では旅行もできなかった」。同じ職場で実習した3人のうち、1人は失踪した。
ハウさんは日本の企業に「送り出し機関が適切かどうかも見極めてほしい」と注文する。「働く先としては韓国も人気が高い。実習生ファーストでなければ選ばれなくなってしまう」
中国新聞社
最終更新:3/16(月) 12:31
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