新型コロナウイルスの感染拡大を受け、京都府山城地域の団体や自治体が外国人向けに多言語での情報発信を進めている。京都府の帰国者・接触者相談センターを兼ねる電話相談窓口でも6カ国語対応が始まっており、異国の生活で突然起きた「見えない災害」の不安解消を目指す。
京都府八幡市は感染による症状や、帰国者・接触者センターに相談すべき体調変化について、「やさしい日本語」で伝えるチラシを作った。多言語で新型コロナウイルスの情報を掲載している自治体国際化協会(東京都)のサイトを紹介しているほか、手の洗い方もやさしい日本語や英語、中国語、韓国語、ベトナム語で伝えている。
同市では2019年末時点で、1674人の外国人が暮らしている。市健康推進課によると、チラシの言語は外国人市民の26%を占めるベトナム人と、各17%の中国人、韓国・朝鮮人向けとして選んだという。
2月末、市の広報紙に折り込んで市内全戸に当たる3万1732世帯に配布した。市役所でも希望者に配っており、久保豪課長は「市外の人でも、必要なら渡せる」と話す。
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感染拡大の影響でまちから人影が減り、マスクやトイレットペーパーが店頭から消えた。ネット上では真偽不明の情報が飛び交う。日本人でも戸惑う状況は、「言葉の壁」がある外国人には大きな精神的負担になる。
「他の物の生産に集中するため、ティッシュが作られないと聞いた」。そんな不確かな情報を伝え聞いた経験があるのは、城陽市の日本語教室で学ぶベトナム人のズオン・ティ・アイン・トゥエットさん(22)だ。
「服や食べ物もなくなったらどうしよう」と戸惑い、「言葉が分からないと、正しい情報を得るのは難しい。もっとベトナム語の情報が欲しい」。
市国際交流協会は今月4日、3月中に在留期間が満了する人は満了日から1カ月後まで在留資格を更新申請できることや、市内の小中学校の休校などを伝える文書を英語、中国語、ベトナム語とやさしい日本語に訳し、ホームページ(HP)に掲載した。大久保雅由事務局長は「『いざというときは頼って』というメッセージでもある」と話す。
精華町のHPは、随時更新しているイベント中止などの情報を、グーグルの機能を活用してタガログ語やベトナム語など九つの言語に翻訳するシステムを備える。毎月、英語版とやさしい日本語版を発行している町広報誌「いちご」の3月号には新型コロナウイルスの特集コーナーを設け、HPにもアップしている。
府が英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語への対応を始めた専用相談窓口には12日までの3日間に、英語で2件、ポルトガル語で1件の対応を求める相談が寄せられた。他の5言語のような24時間対応ではないものの、ベトナム語も午前8時~午後10時に受け付けている。
相談者と職員、通訳が3者通話で同時に会話できるシステムにしており、府健康対策課は「言葉が分からない人の不安解消につながれば」としている。
最終更新:3/16(月) 19:21
京都新聞