外国人に分かりやすい表現法「やさしい日本語」の普及を目指す取り組みが京都府の山城地域で広がっている。災害時などに詳細な情報が得られず、被害が拡大するのを防ぐため、消防署などで研修が始まっている。
「『火の元を確認する』を外国人が分かるよう、違う表現にしてみてください」。10日、京田辺市消防署では署員を対象にした研修会が開かれていた。講師の「やさしい日本語」有志の会の花岡正義代表(73)は「災害時に使われる日本語は熟語が多く難しい。1文を短くするなど、ルールを体験してください」と語り掛けた。
京田辺市の在住外国人は京都府内で5番目に多く、2019年4月には千人を突破。特に近年は、技能実習生として来日するベトナム人の増加が顕著だという。
京田辺市消防署の北畑光男消防司令長(59)は、通報してくる外国人にも変化があると感じている。「今までは英語や日本語を使う留学生が主だったが、どちらも使わない外国人が増えている」。在住外国人は英語圏以外の出身者が多いと知り、例年開いていた英語研修を「やさしい日本語」研修に切り替えた。
ローマ字を使わない、ふりがなをふる、擬音語の使用を避けるなどのルールを学んだ桂野茂樹通信指令部司令補(41)は「外国人に限らず、子どもからお年寄りまで分かりやすい表現だと思う。今後活用していきたい」と話す。
同志社大でも、留学生を対象にした授業で「やさしい日本語」の講習を行っている。防災と地域コミュニティーをテーマに防災心理学の専門家など外部講師を招き、災害時の情報をどう収集・共有するかを学ぶ。
講師の一人、「外国人女性の会パルヨン」のハッカライネン・ニーナ代表理事は「やさしい日本語は言葉の壁を乗り越えられる」と活用を勧める。
「頭部を保護してください」を「帽子をかぶってください」に、「緊急に避難してください」を「すぐ逃げてください」に直すだけで飛躍的に理解度が上がると説明。「日本人は小さいころから防災訓練を行っている。私たちも日本人並みの知識を身に付け、やさしい日本語で情報発信すれば、地元の人と外国人の架け橋になれる」と呼び掛けた。
八幡市では防災面だけにとどまらず、インバウンド客受け入れ環境整備の一環としてやさしい日本語を広めている。10月には龍谷大と連携し、市内観光事業者を中心に「やさしい日本語」のワークショップを開催。道案内などをやさしい日本語で行えるよう練習した。同市は「参加者からは『英語以外にも思いを伝える方法があると分かった』との反響があった。コミュニケーションにはこういう方法もあるよ、と提示していきたい」と意気込んでいる。
最終更新:1/3(金) 11:30
京都新聞