長崎県五島市三井楽町の農業法人で働くベトナム人技能実習生、グエン・スアン・ズイさん(20)が4日、三井楽地区の成人式に出席する。五島に来て1年余りがたち、日本文化を深く知りたいとの思いがあるからだ。将来の夢は、母国と日本の橋渡しをする通訳。新たな古里で、「大人」への一歩を踏み出す。
ズイさんは2018年秋、農業分野では市内初の実習生として来島。同期2人と共に、サツマイモの生産や加工を手掛ける「アグリ・コーポレーション」(佐藤義貴代表)で技術を学び始めた。1年後に後輩3人も加わり、現在はベトナム人6人が日本人従業員と一緒に業務に励んでいる。
ズイさんはベトナム北部のタイビン省出身。実家は農家だが、叔母が日本語通訳をしていることもあり、自身も幼い頃から通訳を目指していた。現在の仕事は「きついけど、面白い」。職場の日本人の同僚たちと冗談を言って笑い合うと、疲れは吹き飛ぶ。熱や腹痛で会社を休んだ時には、同僚が食事や薬を寮に持ってきてくれたことも。優しさが身に染みた。
佐藤代表はズイさんの働きぶりを「明るく、真剣に取り組んでいる」と評価。「農業はもちろん、片付けや時間を守ることなど、日本の働き方もしっかり学んでほしい」と願う。
ズイさんの趣味は写真撮影。休日にはカメラを片手に、自転車で島内を走り回り、気に入った景色や住民の姿を撮っている。母国の友人とは会員制交流サイト(SNS)でつながり、写真を投稿するとコメントが寄せられるという。
ベトナムに成人式はなく、年齢による子どもと大人の明確な線引きもないという。だが昨年、市から式の案内状が届き、「日本にしかない文化を体験したい」と出席を決めた。
研修期間は残り2年弱。通訳として「日本とベトナムを仲良くしたい」という夢を追い、日々の勉強にも取り組んでいる。「真面目な大人。将来のことを考える大人」。ズイさんは自らが目指す理想像を、そう語った。
最終更新:1/3(金) 11:19
長崎新聞