毛受 敏浩
4月に新たな移民政策を導入した日本。在留外国人の数は年々増えて過去最高になった。在留外国人とその子どもたちへの生活習慣や日本語教育の取り組みが試されている。今回の「移民」政策シリーズでは教育に焦点をあてる。
人手不足と人口減少が社会のあらゆる分野に悪影響を与えつつある中で、日本に住む外国人の存在が注目されている。少子化が進み、子どもの数が激減していく一方で、在留外国人の数は年間15万人以上増え続けており、過去最高を記録。そのほとんどが青年世代だ。彼らの活躍と定着が今後の日本の将来を左右すると言っても過言ではない。
彼らが日本で暮らす上で、最も重要な能力のひとつが日本語だ。しかし、日本に10年以上暮らしているのに読み書きが不自由で、いまだに緊急時の対応もままならない外国人も多い。日本では日本語教育に政府の関与がほぼない状態が長年続いてきた。一方、ドイツや韓国(※1)など、在留外国人に対して公的に自国語の学習や生活習慣のオリエンテーションを半義務化する社会統合プログラムを実施している国も多い。(※2)
(※1) https://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/legis/pdf/024307.pdf(韓国における外国人政策の現状と今後の展望)
(※2) http://www.bunka.go.jp/pr/publish/bunkachou_geppou/2011_08/special/special_04.html(海外における移民に対する言語教育:文化庁HP)
そうした状況が変化し始めたのが、昨年末、実施された入管法の改正だ。ブルーカラーの分野で初めて就業を目的とする在留資格「特定技能制度」が創設され、同時に政府は「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策(以下、対応策)」を発表した。法律に基づく政策ではないものの、在留外国人を共生社会の生活者として政府が支援することを明示した点で画期的なものだった。
「対応策」では、ボランティア主体で行われている外国人に対する日本語教育について、「地域日本語教室」の拡充を図り、空白地域の解消を目指し、多言語ICT(情報通信技術)学習教材の開発により多様な学習形態のニーズへ対応することなどが盛り込まれている。
筆者が委員を務める文化庁の日本語小委員会では、これを受けて、2019年度に日本語教師の国家資格化を議論している。大学や民間の日本語教師養成学校で育成されてきた日本語教師の専門性をより高め、権威のあるものにすることで、日本語教育の質的向上を図る取り組みだ。また、日本語教育の標準化に向けて、乱立する日本語能力の資格試験を標準化し、欧州の基準である語学力基準「CEFR」に準拠していく方向で議論が進んでいる。
最終更新:12/2(月) 15:00
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