言葉の壁、情報届かず コロナ、沖縄県内の外国人支援に課題 感染疑い我慢も
新型コロナウイルスの感染対策などについて情報交換する外国人ら=昨年12月、那覇市内(提供)
新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、沖縄で暮らす外国人に必要な情報が届かず、対策や支援の必要性が浮かび上がっている。言語の壁があり、感染が疑われる場合の手順が十分共有されていないほか、保険に入れず任意のPCR検査で全額自己負担を強いられる人もいる。課題は行政などが早急に対処できるものから、在留資格制度が関連するものまでさまざまだ。 「感染してしまったらどうすればいいのか、情報にアクセスできていない状況は今もある」。2011年から沖縄で生活する沖縄ネパール友好協会のオジャ・ラックスマンさん(34)はそう説明する。 政府の在留外国人統計によると、沖縄にいるネパール人は20年6月末現在2401人。その6割強を占める留学生は、多くがアパートなどで複数人で暮らす。万が一感染した場合のPCR検査やホテル療養は無料だが、情報が十分行き渡っておらず「お金がかかると思い込み、我慢してしまう人もいる」(ラックスマンさん)という。 こうした状況を踏まえ、昨年末に沖縄ネパール友好協会が行政の関係者、医師らと対応を話し合う場が設けられた。つなぎ役になったのは、コロナ禍以前から地域で生活するネパール人との交流を続ける那覇市の若狭公民館だ。 感染が疑われる場合の手引が多言語化されていない。帰国したい場合に必要な英語の検査証明はどこで発行できるか。療養時に宗教上食べない牛肉などを除いた食事をどう用意するか―。課題を一つ一つ整理し、外国人に必要な支援策の検討がようやく動き出した。 若狭公民館の宮城潤館長(48)は「日本にいる外国人なら当然分かっていると私たちが思い込みがちな大事なことでも、実は伝わっていないことがある。困っていることに気付ける想像力が必要だと感じる」と話す。 言葉の壁や文化の違いに加え、申請に関する行政の煩雑な手続きも外国人に情報が届きづらい一因になっている。上智大学の田中雅子教授(国際協力論)は「外国籍の住民と一緒に役所に行くたびに、大学教員の自分でさえ2度聞かないと分からない手続きが多いことに驚く」と指摘する。 コロナ禍で帰国のめどがつかず日本にとどまる外国人は少なくない。特に昨年来、県内では留学生などの在留資格取り消しが増加。在留資格を失うと国民健康保険も取り消され、帰国するため必須となるPCR検査費を全て自己負担しなければならなくなる。 田中教授は「国籍や保険の有無によらず、誰でも無料で検査できるという発想の転換がまず必要だ。無料で検査できるHIVなどの性感染症に比べ、新型コロナはハードルが高いと感じる」と語る。その上で、在留資格を失った非正規滞在者に対し、就業できる在留資格の付与などを可能にする「一種のアムネスティ(在留資格の復活)」が必要だと強調した。(當山幸都)
琉球新報社