戦時下も続けた国勢調査100年 持続可能な仕組みへ課題も

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産経新聞

国勢調査の歴史

 5年に1度、日本に住む人全てを対象にした国勢調査が14日から始まる。今回の調査は大正9(1920)年に第1回調査が行われてからちょうど100年の節目となる。日本の姿を正確にとらえるため始まった国勢調査は、今も最も重要な政府統計との位置づけだ。今年は新型コロナウイルスの影響で調査員の確保が進まない中、調査期間の延期などでしのぐが、IT活用といった抜本的な見直しを求める声も高まっている。 【表】「大正9年」第1回調査と「平成27年」前回を比べてみる  《国勢調査(このしらべ)は国民(ひとびと)の生活(くらしかた)、社会(よのなか)の実況(ありさま)をよく知り、善政(よいせいぢ)の基礎(もと)を作らんが為に行ふものなり》  第1回の調査票にはこんな一文が添えられている。時の首相は原敬。外務省書記官としてパリの公使館に赴任した際、フランスの国勢調査を目の当たりにし、近代国家の運営に不可欠なものと認識したとされる。  どの地域に、どんな人が暮らし、どの程度の収入があるのか-。こうした情報がなければきめ細かな行政サービスは不可能だ。国勢調査を行う基本的な考え方は今も変わらない。  国勢調査は過去に1度だけ中止されたことがある。終戦の年の昭和20年の第6回調査。ただ2年後には調査用紙の調達すら困難な状況の中で臨時調査が行われた。その後もマークシートやインターネット回答など時代に合わせ調査の項目や方法が見直されてきた。  変わらないのが調査員が全世帯を最低でも一度は訪問して調査票を配るという手法だ。今回も約60万人が任命された。不在の場合は何度も訪問する地道な作業だが、総務省の担当者は「一度は訪問しないと、実態は見えない」と語る。  ただ、調査員の確保は年々難しくなってきている。専業主婦の減少や定年後も働き続ける高齢者が増加し、成り手が減っている。個人情報保護への意識の高まりによる調査拒否やセキュリティーの高いマンションが増加し、調査自体も難航。本人から回答が得られず、近隣住人から聞き取りで代替する割合も平成12年の1・7%から27年は13・1%に増えた。  NTTデータ経営研究所の上瀬剛社会システムデザインユニット長は「海外では行政が持つ情報を統計に活用するなど効率化の動きが見られる」と指摘。高市早苗総務相も今月8日の記者会見で「調査のあり方の見直しは必要」として、マイナンバーの活用などを検討する考えを示した。(蕎麦谷里志)  国勢調査 国の人口や世帯構成などを調べるため、外国人を含めた全国民を対象に5年ごとに実施される国の最も重要な統計調査。集計結果は衆院小選挙区の区割りや地方交付税の算定に使われるほか、将来の人口推計など別の統計にも活用され、国や自治体、民間の研究機関などが少子高齢化対策や産業振興策などを検討する際の基礎資料にもなっている。今回は9月14日から調査票の配布とインターネット回答を開始。回答期限は10月7日に設定されている。

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