全国有数の高原野菜の産地、長野県佐久地域の農家が人手不足に悩んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大による入国制限で、農作業を担う外国人技能実習生の多くが入国できないためだ。そこで地元農協などが仲介役となり、休業で収入を断たれた観光業などの人材を雇う試みが始まった。
【写真】農家と求職者の個別相談会。新型コロナウイルス感染防止のため、屋外の駐車場の車庫内で開いた=2020年5月8日午後1時36分、長野県佐久市、滝沢隆史撮影
「6月から出荷作業が始まる。人が来なければ、作付けを半分程度に減らさざるを得ない」。県やハローワーク佐久が8日に佐久市内で開いた農家と求職者をマッチングする相談会で、参加した14軒の農家から悲鳴のような声が相次いだ。
南牧村でレタスやキャベツなどを育てる男性(57)はため息をつく。例年、4月に実習生1人を受け入れていたが、今年はめどが立たない。地元のハローワークに求人を出してもなしのつぶて。「農作業は重労働。なり手は少ない」
「実習生3人が入国できなくなった」と嘆くのは、日本一のレタス産地で知られる川上村で5ヘクタールの畑を営む男性(71)。友人に手伝ってもらっているが、「出荷で忙しくなる6月になったら今のままではとても回らない」と話す。
県によると、中国や東南アジアなどから毎年2千人程度の実習生を県内で受け入れているが、今年は約800人が入国できず、佐久地域では500~600人不足しているという。佐久地域の夏場のレタスやハクサイなどの出荷量は全国の8割以上を占めるといい、収穫量が減ると市場価格にも影響が出かねない。
こうした中、地元の農協には、全国で約130のホテルを運営するホテルグループからこんな相談が寄せられているという。「客室係として雇用する100人以上の出稼ぎの外国人を、休業期間中に農家で働かせてもらえないか」
朝日新聞社