新型コロナウイルス特措法に基づく緊急事態宣言が出ている福岡県で、外国人留学生たちが苦境に立たされている。収入源のアルバイト先は軒並み休業。帰国もできない上に日本語の壁が立ちはだかり「命の危険を感じる」という声も。影響が広範囲に及ぶ市民生活の陰で、留学生を含む外国人労働者の存在は見過ごされかねず、支援者は焦りを募らせている。
「5月までぎりぎり頑張れます。その先は…分かりません」。今春、福岡大大学院に進学した福岡市のベトナム人留学生ファム・ティ・ニャット・ザンさん(24)はため息をつく。
2年半前に来日。生活費などを稼ぐため、喫茶店で入管難民法が定める就労上限の週28時間アルバイトしていたが、コロナ禍で勤務は減少。7日の緊急事態宣言後はゼロになった。
日本人学生の中には実家に帰った人もいるという。しかしザンさんはベトナムに帰る航空便も途絶えており、貯金を取り崩すしかない。「家賃や生活費に充てれば、あと1カ月くらいは生活できると思います」
医療面も不安だ。今月、ザンさんは発熱やせきの症状が出た。コロナ感染を疑い、福岡県外国人相談センターに連絡したが、病院に行くか電話するよう勧められただけ。ベトナム語が通じる医療機関は少なく、悩んだ末に自宅で静養。症状は治まったが「受診費用などの具体的な情報がほしい」と訴える。留学生の間では、政府が打ち出した「全国民に一律10万円給付」も話題という。
3月に福岡市内の専門学校を卒業し、就労ビザ取得を目指して就職活動をしていたスリランカ人、チャーマラ・セナウィラタナさん(26)は合同説明会が相次いで中止になったあおりを受けた。
必要な情報を企業に直接問い合わせるしかなくなり「自力で企業にメールや電話をするのは大変です」。卒業後は留学生ではないためアルバイトは認められず、収入はない。
留学生の就職をサポートする団体「YOU MAKE IT」(同市中央区)は3月中旬、臨時の電話相談窓口を開設。「家賃や学費が払えない」「母国はロックダウン(封鎖)。命の危険を感じる」-。楳木(うめき)健司代表(36)には1日5件前後、相談が寄せられている。
福岡県によると、県内の留学生は約2万人(2018年)で年々増加。査証(ビザ)延長申請など相談に応じているがビザの条件によっては対応できず「国に意見を伝えていきたい」(国際政策課)としている。
楳木さんや母校の支援もあり、チャーマラさんは14日、熊本市内のタイヤ販売店に内定した。しかしチャーマラさんは「ほとんどの留学生は困り果てている」と笑顔は半分。楳木さんは「立場の弱い留学生は、最初に生活が立ち行かなくなってしまう」と早急な支援を求めた。 (坂本信博、押川知美)
西日本新聞
最終更新:4/20(月) 14:44
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