特定技能制度の創設から1年になるのを前に、出入国在留管理庁の佐々木聖子長官が記者会見し、利用が低調な現状を踏まえ、「改善できるところは改善したい」との考えを示した。主な一問一答は次の通り。
◇
--全国12の地方紙が実施した外国人労働者の調査で、4割が「特定技能」を知らないと回答した。今後どのような対策を講じるか
「制度について、まだまだ分かりづらいという声をいただいている。これからさらに各関係団体に詳細な資料を送るなどして制度の周知に努めたい。日本にいる外国人の向けの広報がまだ不十分と改めて感じている。今後、特定技能資格に関心を持つ可能性のある外国人へ情報がきっちり到達するよう工夫していく」
--地方自治体で外国人支援の評価が足りていない部分は
「昨年は100を超える地方自治体に外国人向けの総合的窓口を整備した。自治体によって取り組むべき課題もさまざま。状況に応じてどういう支援が必要か把握し、希望に添うような支援ができるようにするのが私たちの役目だと思う」
--企業から受け入れに伴う費用負担に不満が出ているが、どう解決するのか
「特定技能は、外国人の活用、受け入れが必要だという選択肢を取られた皆さんに使っていただく制度だ。制度の大前提として、日本人と同等の報酬や納税、社会保険に加入しているかなど、そういうことをきちんと確保した上で外国人を受け入れていただくことになる。外国人材の円滑な受け入れのためにかかるコストを負うのが前提だ」
--初年度の政府の受け入れ見込みを大きく下回ったが
「特定技能は出だしに時間を要したが、ようやく今年度の下期になって本格的に制度が動き出し、全14分野のうち13分野で試験を実施できた。課題としては、海外における日本向けの送り出しの仕組みがまだできあがっていないということだ。ベトナムでは、技能実習制度で送り出し機関が不当に高額な手数料を徴収し、実習生に借金を負わせていた。それが入国後の失踪につながる原因の一つと考えられている。技能実習制度と違い、必ずしも送り出し機関を必要とする制度ではない。合理的な送り出し制度にしてほしいという気持ちを持っている。『制度が使いづらい』『よく分からない』『複雑だ』との声はいただいている。情報発信をホームページなどでしているところだが、改善できるところはさらに改善をしていきたい。この先、試験の回数を増やし、試験に合格した人と会社との結びつけが上手にできるように力を入れる」
--新型コロナウイルスの感染拡大の影響は
「準備をしているのに足止めされている人もいれば、『もう行くのはやめよう』という人も当然いるだろう。ようやく今年度後半から加速度的に(在留資格取得)数が伸びていたので、一刻も早く元の状態に戻ってほしいと、祈るような気持ちだ」
最終更新:3/31(火) 20:59
産経新聞