外国人労働者 医療に壁 札幌のベトナム人長期療養「想定外」の課題

外国人労働者 医療に壁 札幌のベトナム人長期療養「想定外」の課題

4/5(日) 11:13配信

北海道新聞

 札幌市内で働いていた外国人技能実習生が来日半年後の昨年9月、病気で倒れ、今も意識不明で入院している。実習生が長期療養を強いられるのは入管当局にも「想定外」。今回は支援者が入院手続きや在留資格の切り替えに尽力したが、「安価な労働力」と見なされがちな外国人は見捨てられかねない。政府が昨年4月、労働力確保のため、実習生制度を土台にした新たな在留資格「特定技能」を設け、外国人労働者の増加や滞在延長が見込まれる中、専門家は公的支援の枠組みを整えるよう訴えている。

国保何とか申請

 「家族のためにも一生懸命働きたい」。ベトナム人実習生ズオン・ゴック・トゥさん(19)は札幌市中央区の建設会社で働いていた昨年9月、建設現場で頭痛を訴えて病院に救急搬送された。本国の家族への連絡がままならない中、同社社長(48)が保証人として脳出血の手術に同意し、一命は取り留めたが、意識は戻らず、今も人工呼吸器を付けて入院している。
治療費は、公的保険や受け入れ企業が加入する実習生向けの民間保険で賄ってきた。今年3月末の在留期限が近づく中、治療を続けながら滞在を延ばせるのかが課題として浮上。トゥさんが通っていた教会を統括するカトリック札幌司教区の難民移住移動者委員会が支援に乗りだした。
札幌出入国在留管理局など関係機関と協議を重ねる中、当初は「医療滞在」の資格に変更することを検討したが、国民健康保険に加入できないことが判明して断念。本来は就職先が未定のまま大学などを卒業した留学生らに特別に認められる在留資格「告示外特定活動」なら国保に加入でき、「人道上の理由」で認められる見通しとなり、何とか申請にこぎ着けた。国保で賄えない治療費は障害年金の受給で乗り切ることになり、同様に申請手続きが進められている。

公的支援強化 望む声

 ただ、実習生を安い労働力とみなす風潮が根強い中、全ての外国人労働者が支援に恵まれるかというと簡単ではない。同委員会の西千津さん(55)は「トゥさんが札幌で治療を続けられるのは、受け入れ企業や仲介した監理団体が実習生の人権を尊重したからだ」と指摘し、同社社長は「公的な支援体制をつくらないと、十分な医療も受けられずに見捨てられる実習生が出かねない」と危惧する。

最終更新:4/5(日) 11:23
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