横浜で開業する若手眼科医3人が、ベトナムの眼科医療が充実していない地域を定期的に訪れ、ボランティアで白内障の手術を続けている。機器や薬剤が不足する同国での活動は課題もあるが、医療の原点をあらためて実感できる経験だという。開業に当たっては活動で得たことを実践しており、眼科では珍しい往診にも取り組む。医師らは「現地の医師から学ぶことも多い。今後もぜひ活動を続けたい」と話している。
ベトナムで活動を続けるのは、2019年10月に横浜けいあい眼科和田町院(同市保土ケ谷区)を開業した30代の清水映輔さん、矢津啓之さん、明田直彦さん。NPO法人ファイトフォービジョンの一員として17年から毎年同国を訪れ、無料の白内障手術をしている。
直近は19年11月21日から24日まで、同法人理事長で鶴見大の藤島浩教授らとともに北部最大の港湾都市・ハイフォンのアンドゥオン総合病院で活動した。現地で息長く支援活動を続けるNPO法人アジア失明予防の会の医師、服部匡志さんや現地の医師らとも協力し、2日間で約100件の手術を行ったという。
白内障は80歳以上ではほぼ100%の人がかかるという身近な病。手術は日本国内では年間130万件行われ、非常に基本的な技術だ。一方、ベトナムでは大都市のハノイ、ホーチミン以外で充実した眼科医療を受けることは困難だという。眼科医の数も千数百人と日本の約1割にとどまり、医療を受けずに失明する人も少なくない。
「先進的な日本だけでは分からないことが多い。医療が充実していない地域から学び、日本に持ち帰りたいと思った」と清水さん。現地に持ち込む機器は日本で使う最新鋭ではないため、機器が補ってくれていた部分を医師の技術で着実に行う必要がある。「より丁寧に、正確に行うことを再認識した」という。
また手術は本来、無菌で行われ、日本ではそのための環境が整うが、ベトナムでは手術室が屋外であったり、手を洗う水が滅菌水でなく水道水であったりと環境整備は進んでいない。こうした状況で工夫しながら医療を行う現地の医師からは学ぶことが多く、「現地のドクターの友人たちとの関係も重要」と清水さんは力を込める。
清水さんらが開業した医院では、貴重な経験を生かした取り組みを進める。患者家族にもきちんと説明することが当たり前だったベトナムにならい、手術の際には家族にも説明するようにしているという。そのため、来院しやすいよう土日祝日にも診療を行う。また、通院することが難しい人のために往診も行う。
清水さんは「ベトナムで学んだことを100パーセント生かしたい」と話し、ベトナムでの活動についても今後継続するという。「非常に有意義な体験。続けることで普段できないことに触れ、日本に貢献したい」
神奈川新聞社
最終更新:1/12(日) 15:01
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